ギャンブル依存による借金の解決法:個人再生と自己破産を比較

ギャンブル 個人再生
ギャンブル

ギャンブル依存は現代社会で深刻な問題となっており、特にパチンコ、スロット、競馬、競艇、オンラインカジノ、宝くじ(ナンバーズ、toto)など、日常的に利用されるギャンブルが広く影響しています。
これらのギャンブルに依存することにより、借金を抱えることになり、その借金が膨らみ続けることも少なくありません。

ギャンブル依存症とは?

ギャンブル依存症とは、ギャンブルを辞めたくても辞められない状態を指します。
パチスロ、パチンコ、競馬などのギャンブルを始めると、自分の意思では止められず、次第に浪費が増え、借金が増加していきます。
このような状態に陥ると、日常生活に多大な支障をきたし、人間関係や仕事にも悪影響を及ぼします。

借金の増加と影響

ギャンブル依存に陥ると、負けを取り戻そうとして、借金をしてしまうことが避けられなくなってしまいます。
そして、消費者金融やクレジットカードからの借り入れが膨らみ、返済ができなくなり、任意整理といった債務整理が必要となる場合もあります。
最終的には、全く返済ができず、自己破産や個人再生といった法的手段を検討せざるを得なくなることもあります。

個人再生とは?

個人再生の概要

個人再生は、債務整理の一種であり、特に多額の借金を抱えた個人が経済的な再起を図るための手続きです。この方法では、裁判所を通じて借金の減額および返済計画(再生計画案)の策定を行います。
再生計画案が裁判所に認可され、債務者がその計画に従って返済を進めることによって、一定期間後に残りの借金が免除されます。
個人再生は、多重債務に苦しむ個人にとって、自己破産を避けつつ、再出発の道を開く手段となります。

個人再生の要件

個人再生を利用するには、いくつかの条件があります。
まず、その人の総債務額が5000万円以下であることが必要です(住宅ローンを除く)。
また、継続的な収入があり、その収入によって再生計画に従った返済が可能であると見込まれることが条件となります。
一部の債務が減額されても残りの債務を返済できるという返済計画を立案し、それを実行することが求められます。

ギャンブルによる借金でも個人再生が可能な理由

ギャンブルが原因の借金でも個人再生が可能な理由は、個人再生には「免責不許可事由」が存在しないためです。
自己破産の場合、ギャンブルや浪費が原因の借金は、免責が認められない可能性がありますが、個人再生ではそうした制約がありません。
つまり、パチンコやスロット、競馬、競艇などのギャンブルによって生じた借金でも、適切な再生計画を裁判所に提出し、認可を受ければ救済を得ることができます。
したがって、ギャンブル依存症により借金が膨らんでしまった場合でも、個人再生は有効な借金整理方法となります。

自己破産とは?

自己破産の概要

自己破産とは、借金や債務を返済できなくなった場合に、裁判所を通じて債務を免除してもらうための法的手続きです。
自己破産には、「同時廃止事件」と「管財事件」があります。
同時廃止事件とは、破産手続きの開始と同時に手続きが終了するものを指します。
通常、自己破産では破産管財人が選任され、財産の調査や債権者への配当が行われます(管財事件)が、同時廃止事件ではこれらの手続きが省略されます。

自己破産の要件

自己破産の要件としては、借金の返済が不可能であり、現在の収入や財産では返済する見込みがないことが必要です。
財産を処分したら完済するケースや、任意整理を利用し、3年程度の分割払いで完済する事案では利用ができません。

ギャンブルによる借金が自己破産で問題となる理由

ギャンブルによる借金が自己破産で問題となる理由は、免責不許可事由に該当する可能性が高いからです。
ギャンブルや浪費による借金は、破産法において「免責不許可事由」として扱われ、借金の免責が認められないことがあります。
ただし、全てのケースで免責が拒否されるわけではなく、裁判所の裁量によって、破産管財人の意見や直近の生活状況などを総合的に判断して、免責が認められることもあります。

個人再生と自己破産の比較

結果の違い

個人再生と自己破産の結果には大きな違いがあります。
個人再生は、裁判所の監督の下で再生計画を立て、その計画が認可されれば借金が大幅に減額される手続きです。(※逆に言うと、借金の一部は支払をする手続きになります。)
一方、自己破産は、財産を売却して債権者に配当を行った後、残った借金を免責する手続きですので、支払を一切しないということになります。

理由を問わない

個人再生の要件は比較的緩やかで、ギャンブルや浪費が原因の借金でも、借金の総額が5000万円以下で安定した収入があれば利用することができます。
一方、自己破産は、ギャンブルや浪費が借金の主な原因である場合、免責不許可事由に該当する可能性が高く、免責が認められないことがあります。

借金免除の可能性の違い

個人再生と自己破産の最も大きな違いは、借金免除の可能性にあります。
個人再生は、再生計画が認可されれば借金の大部分が減額されるため、ギャンブルによる借金でも、しっかりとした定期収入があれば再生計画が認可される可能性が高いです。
しかし、自己破産の場合、ギャンブルが原因である借金は免責されない可能性がありますので、専門家に報酬を払ったのに借金も無くならないということもあり得るということです。

当事務所が関与した事案

事例1: ギャンブル依存から個人再生の申立て

スロットの負けを取り戻そうとして借金をしてしまい、最終的に350万円まで膨れ上がった段階で、過去に当事務所で債務整理をした方からご紹介を頂き、依頼を受けました。
正社員でしたので、最初は任意整理を考えましたが、借金の額が大きすぎるため、減額できても、返済原資を大きく超えてしまい返済が困難であるため断念しました。

次に、自己破産を検討しました。
ただ、ギャンブルによる借金が全ての状態で、返済期間が短く、一部現金化している業者もあり、免責不許可事由に該当していることもありましたが、本人も自己破産は希望しなかったため、断念しました。
※ギャンブルや浪費が原因で借金を作った場合、自己破産手続きでの免責が不許可事由に該当いたします。

そこで、最終的に個人再生を選択することにしました。
個人再生は、再生計画案が裁判所に認可されることが必要ですが、免責不許可事由といったものがないため、ギャンブルが原因であってもそれだけをもって不認可とされることはありません。
そこで個人再生の申立てを申立て、再生計画案を裁判所から認可を得て、借金が大幅に減額される形での返済計画を立てることができました。

ギャンブルから足を洗うことが重要ですが、ギャンブルによる多額の借金も個人再生によって大幅に減額することができ、返済可能額の中で返済し、生活を立て直すことができました。

事例2: ギャンブル依存から自己破産の申立て

上記と似たような事案でしたが、競馬、競艇にのめり込み、気がつけば250万円近くの借金を背負った段階で依頼を受けました。
個人再生の選択も検討しましたが、派遣社員で収入が安定していないこと、そもそも生活費でいっぱいいっぱいで返済する余力が無い事から、個人再生は断念し、相談の結果、自己破産を選択しました。
上述の通りギャンブルによる借金は自己破産の免責不許可事由に該当しますが、任意整理も個人再生もできないため、やむを得ない状況でした。

当然のことながら、自己破産申立後は破産管財人が選任され、収入、借金の使途、生活実態を詳しく調査されましたが、依頼後はギャンブルを一切しなかったこと、家族が定期的な支援をしてくれることもあり、裁判官の裁量による免責を認めてもらうことができました。
これにより借金は免責され、新たなスタートを切ることができました。

ハードルは高いですが、ギャンブルが原因の借金でも自己破産の免責が認められる可能性は0ではないです。

結論

最適な解決法の選択

ギャンブル依存による借金問題に直面した場合、適切な債務整理の方法を選択することが極めて重要です。
個人再生と自己破産はその2つの主要な選択肢となりますが、それぞれに特徴と条件があります。

ギャンブルが原因で増えた借金を減額したい場合、個人再生は適した選択肢となります。
個人再生は、ギャンブルや浪費が原因であっても適用が可能で、再生計画が裁判所に認可されれば、一定の借金が減額されます。
(※ただし、再生計画案が認可されないと効力が発生しません。小規模個人再生の場合、債権者の半数以上か、債権額の過半数の債権者から異議が出てしまうと、手続きを進めることができなくなってしまうため、各債権者の債権額に注意は必要です。)

一方、自己破産は借金が全額免除される強力な方法ですが、ギャンブルや浪費の場合、免責が認められないことがあります。
上述の通り、これは「免責不許可事由」に該当するためで、結果的に自己破産の手続きが進められない可能性があります。
そのため、ギャンブルによる借金の場合、自己破産よりも個人再生の方が現実的な解決法となることがあります。

以上の通り、ギャンブルが原因の借金問題には個人再生が有効であると言えます。
しかしながら、個人再生を利用し、借金を圧縮できたとしても、そもそも支払いができなければ、意味がありません。
そうした場合には、免責不許可事由に該当していても、裁判所の裁量による免責を狙って、自己破産を選択しなければならないことはあります。
これらの点を考慮し、どちらの方法がご自身の借金問題解決に適しているかを専門家と一緒に検討いただければと思います。

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